「初めての公正証書遺言」について

こんにちは。

福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

もうあっという間に年末ですね。
今年早かったです。

私は今42歳ですが、今年でやっと厄年が終わります。

40歳の時が前厄で全治5ヶ月の怪我をして、
41歳の時が本厄で軽傷ですみましたが、歩行中に車にはねられ、その数週間後にインフルエンザにかかり、
42歳の今年は後厄で特に悪いことがなく、あと3週間ほどで終了します。

来年はどんな一年になるのか楽しみです。

ではブログの内容に入ります。

今回は「初めての公正証書遺言」について書きます。

初めてのおつかいみたいなタイトルです。

以前も公正証書遺言の内容を書きました。
その時は公正証書遺言はこんなものですよという概要でした。

今回は実際に書くことを決めた時から、最後までの流れをブログに書きます。

まずはおさらいです。

(公正証書遺言とは)

「公正証書遺言」は公証人が遺言者からの遺言の内容の口述を受け公証人が作成するものです。
原本は公証役場に保管されます。

公証人とは判事や検事をしていた人の中から法務大臣に任命された人が作成を行い、内容に不備があるかのチェックをしてくれますし、遺言者の悩みにも親身に対応してくれます。検認も不要です。
(検認とは相続発生時に、遺言書があった場合裁判所が内容を確認する作業です)

公正証書遺言ですと、万が一遺言書をめぐって裁判で争われた時も、信用力が一般の遺言書よりも強いので確実に遺言を実現されたい方にはお勧めです。

遺言の存在や場所を誰かに教えてないと、遺言書が見つからない場合「遺言はない」とされかねませんが公正証書遺言にした場合は、
公正証書遺言検索システムで確認ができるメリットもあります。

また、ご高齢で公証役場に行けない場合は公証人が出張での作成が出来ますし、言葉や耳が不自由な方も公正証書遺言をすることができるようになりました。
この場合は筆談での記録になります。

出張の場合は公証役場への手数料が1.5倍近くになります。

(作成の流れ)

①遺言の原案を作成します。

まずはご自身で、遺言の原案を作成します。

そこで必要になるのが下記です。

・財産調査

・相続人の調査

○財産調査について

財産は預金、不動産、有価証券、車、貴金属などです。

まず自分の金融機関の口座がどれくらいあるかと確認し、
不動産は評価額の確認と登記簿謄本を取得しておきます。
公正証書遺言作成の際に必要書類となります。

株券の有無、車や貴金属は価値を鑑定しておくことが必要です。

生命保険は受取人を遺言書で変更できますので、契約内容を確認しておきます。

○相続人の調査について

出生から現在までの全ての戸籍謄本を取り寄せます。
遠方の市役所も簡単に郵送請求ができます。
こちらも作成の際、その前の公証役場との打合せに必要になります。

以前のブログでも書きましたが、相続人には遺留分というものがあります。
本来の法定相続分の半分を請求できる権利です。

遺言書を作成しようと考える方の多くが、未来に家族間での争いを回避したいと考えている方が多いので、
この遺留分を配慮して作成が必要です。
ですので、法定相続人の確定は必須となります。

以上2項目が終われば、財産の割り振りを考え遺言書の原案を作成します。

実筆証書遺言書は全文自署が必要ですが、公正証書遺言は最終的には公証人が内容を読み上げ、公証人が作成するのでワープロでの原案を作成も可能です。

②公証役場に電話をして予約をします。

最寄りの公証役場に電話をして、公正証書遺言の作成の日にちの予約をします。
施設にいる場合は、施設に訪問してもらう日の予約をします。

その時に原案や、戸籍謄本のFAXをお願いされるので、送信します。
同時に証人を2名以上お願いしておく必要があります。

公正証書遺言は他の公正証書より重大な内容を作成するので、民法で証人2名以上の同席が定められています。

証人になれない人は下記です。

・未成年者

・推定される相続人、受遺者、これらの配偶者及び直系血族
※兄弟はなれます。

・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
 
証人を決定したあと、証人の氏名、住所、生年月日をFAXします。

その後、担当の公証人から連絡があり原案の内容に対してのアドバイスがあります。

何度かやり取りをして、最終的な案文が完成します。
問題がなければ、その内容で作成当日を迎えます。
当日はだいたい30分くらいで終わります。

③当日の必要書類

○遺言者本人

・印鑑登録証明書(発行から3ケ月以内)

・実印

・本人の戸籍謄本

○相続人に相続させるとき

・遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本(発行から3ケ月以内)
※本人の戸籍謄本にその方の名前が記載されていれば不要です。

○相続人以外に遺贈させるとき

・受遺者の住民票(発行から3ケ月以内)

○財産に不動産があるとき

・登記事項証明書

・固定資産税評価証明書

○財産に預貯金や有価証券が含まれているとき

・銀行名、口座名が分かる通帳等

○証人の必要書類

・氏名、住所、生年月日、職業などが分かる資料

・印鑑は認印でもいいです。

④費用

公証役場の手数料がちょっと分かりにくいので、解説します。

ポイント下記です。

1 公証役場の手数料は、遺言の目的の財産の価額で変動します。

2 相続人ごとに手数料がかかります。相続人が多いとその分かかります。

3 それ以外に1億円以下の財産の場合は「遺言加算11,000円」が発生します。

例えば、妻と長男と次男の3人が相続人だったとして、
妻に3,000万円、長男に1,500万円、次男に長男に1,500万円を相続させる遺言を作成したとします。

その場合、妻は3,000万円なので、手数料が2万9000円
長男は1,500万円なので、手数料が2万3000円
次男も1,500万円なので、手数料が2万3000円

そして遺言加算11,000円ですので、
2万9000円+2万3000円+2万3000円+11,000円=86,000円となります。

出張の場合は公証役場への手数料が1.5倍近くになります。

通常の公正証書と違い高いので、前もって確認が必要です。
相続人が1人とかだと、あまりかかりませんが。

(まとめ)

今回は公正証書遺言を自分で行うときの流れを書きました。

公証役場って存在は知っているけど、行ったことがないという方がほとんどなので、イメージが湧くように書きました。

公証人はもともと裁判官などをしていた法律のエリートですが、そんなにかしこまった感じでなく、優しい人が多いので安心してご相談できると思います。

大変なのは下準備です。
ここが最も重要なので、面倒ですが正念場です。

公正証書遺言は認知になっていると書くことは厳しいですが、自筆証書遺言書と違って、全文手書きしなくてすむので、手が不自由だったり、施設からなかなか出る事ができない方にとっては便利な制度です。

自筆証書遺言書はマイナンバーカードがないと法務局で保管が出来ませんが、公正証書遺言は保管されるので安心です。

遺言書作成の依頼をよく受けますが、いつも感じていることとしては、「元気なうちにやった方がいい」です。
まだ動けるうち、意思がしっかりしているうちに、準備していくことで確実に老後を安心して迎えることが出来ます。

元気なうちですと、面倒な手続きもどうにか出来ます。
つまり法律家に依頼しなくても出来るので、公証役場の手数料+法律家の報酬額にならずにすみます。

まあ、これは価値観なので心配な方はいつでもご相談下さい。

次回は在留外国人の方のために「在留資格変更許可申請」について書いていきますので宜しくお願い致します。