「遺言書 ケース別③」について

こんにちは。
福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

このブログではどなたの身近にも起きうる可能性がある、相続、申請、トラブルなど日々の問題や心配事を解決するためのお役立ちアドバイスを更新していきます!
もっとこんなことを知りたい!や具体的な事案などあれば、コメント・メールお待ちしております。

今回は前回の続きで「遺言書 ケース別③」についてブログを書きます。

具体的な事例は下記です。

今回も架空の人物からの相談を受けたという設定にします。

⑦甥と姪にも財産を残したい。

⑧障害のある子供に多く財産を残したい。

⑨内縁の妻子に財産を渡したい。

⑦甥と姪にも財産を残したい。

(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・奥様

・子供 

・姉

・姪

(相談内容)

「私には妻と子供がいますが、子供は仕事で遠方に住んでいて日頃は近所に住んでいる姪を可愛がっています。姪も私と妻の面倒をよく見てくれていて、まるで娘のようです。どうにか姪にも財産を分けたいのですが、いい方法ありますか。」

(解決方法)

遺贈することを遺言書に書いておく。
遺言執行者を指定しておく。

(ポイント)

基本的に姪が相続する場合は、配偶者や子供、父母の直系尊属もいない状態で、かつ相続人の兄弟姉妹が死亡していた場合の「代襲相続」の時だけと限定されています。
なかなか少ないケースです。

⑤の「介護をしてくれる子の嫁に譲りたい。」と時と同じように、遺言で遺贈する旨を書きます。
⑤のケースの場合は「寄与分」がありましたが、今回の姪の場合は寄与ほどのお世話にはなってないが、可愛がってるからあげたいとかもあると思うので、姪に「寄与分」の権利はないことになります。

その場合は遺言書に「遺言執行者」を指定しておいた方がいいです。

そんなに可愛がられている姪は、性格も優しいと思うので、自ら「遺言書通り、私にも財産を下さい」とか言い出さないと思いますし、言いづらいです。

遺言執行者を指定いると、執行者が事務手続きとして遺言通りに分配する作業が行われるので、大好きな姪にもきちんと財産が分配されます。

※何度も書いて申し訳ございませんが、遺留分には注意しましょう。

⑧障害のある子供に多く財産を残したい。

(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・子供 長男と次男の2人

※奥様や両親は他界しています。

(相談内容)

「私には息子が2人いて、妻はずいぶん前に他界しています。長男は生まれながらに障害があり、幼児のころからずっとお金をかけてきました。なかなか定職につけない長男の今後のために財産を多く渡したいのですが、次男はえこひいきだと不満を持っています。どうすればいいでしょうか。」

(解決方法)

1 兄に多く遺産を渡す旨を遺言書に書く。

2 弟に遺留分を放棄してもらう

(ポイント)

1について

相続が開始した場合、相続人間で遺産をどのように分割するか話し合います。「遺産分割協議」といいます。

「遺産分割協議」を行う際の基準が定められています。

「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」   民法 第906条

法定相続ですと、兄が1/2、弟が1/2です。
ですが、兄の「心身の状態及び生活の状況」を考慮して分配額を考える必要があります。

弟には1/4の遺留分はあるのでそこを侵害することはできません。

2について

もう1つの方法は弟に「遺留分を放棄」してもらうことです。

「相続の放棄」は相続開始後に手続き行いますが、「遺留分を放棄」はお亡くなりになる前の生前でも手続きが可能で、家庭裁判所の許可が必要となります。

生前に弟に事情を説明し納得してもらう必要がありますので、兄弟間の仲がどうであるかが大事です。

⑨内縁の妻子に財産を渡したい。

(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・奥様

・子供 

・内縁の妻

(相談内容)

「私と妻は以前から夫婦関係がうまくいっておらず別居状態です。私には現在生活を共にしている内縁の妻がおり、財産を少しでも残してあげたいのですが方法はありますか。」

(解決方法)

遺贈することを遺言書に書いておく。
遺贈する財産は簡単に分けられるものにする。
遺言執行者を指定しておく。

(ポイント)

内縁の妻も当然に相続する権利はありません。
その場合は⑦と同じ様に遺贈するか生前贈与になります。受け取る側の税金の負担を計算して決定します。

今回は「重婚的内縁」になっているので、愛人に贈与されると奥様の気持ちは当然おだやかではないはずです。
協議の上でしか分割できない財産を対象にせず、預貯金などはっきりとした財産を指定した方がいいです。

遺言執行者を指定することで、遺産分けが事務手続として淡々と行われるのでお互い顔を合わせなくてもいいです。

つまり、遺贈にしてお互い顔を合わせないでいいようにしておくということになります。

※当然ですが、遺留分は侵害すると揉め事になりかねません。

(まとめ)

今回3回に渡って遺言書の様々なケースを書きました。
9つの例を出しましたが、人生は皆色々で考え方も色々なので、もっと色んなケースが存在します。

ですが、自分の思いやメッセージは未来に残すことが出来ます。

なんでもかんでも遺言に残すとトラブルのもとなので、法律の知識が必要になります。

登場人物全員のことを、よく考え作成してみましょう。
できれば、皆の顔や思い出を浮かべながら。

この作成作業こそが人生の記憶のアルバムを再度めくることになるでしょう。

次回は遺言書の流れで「自筆証書遺言 保管制度」についてブログを書きますのでよろしくお願いします。