「遺言書 ケース別②」について

こんにちは。
福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

このブログではどなたの身近にも起きうる可能性がある、相続、申請、トラブルなど日々の問題や心配事を解決するためのお役立ちアドバイスを更新していきます!
もっとこんなことを知りたい!や具体的な事案などあれば、コメント・メールお待ちしております。

今回は前回の続きで「遺言書 ケース別②」についてブログを書きます。

具体的な事例は下記です。

今回も架空の人物からの相談を受けたという設定にします。

④残された妻の扶養や介護を子供にお願いしたい。

⑤介護をしてくれる子の嫁に譲りたい。

⑥再婚後の子と前妻の子とで相続争いをしてほしくない。

④「残された妻の扶養や介護を子供にお願いしたい。」

(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・奥様

・子供 長男と長女の2人

(相談内容)

「今まで妻と子供の3人で暮らしてきました。長女は嫁いで別の土地で暮らしています。長男は今でも実家に住んでいて出ていくつもりはないみたいなので、自分にもしものことがあったら長男に妻の面倒をみてほしいです。その分財産は多く残します。」

(解決方法)

長男に妻を扶養、介護することを条件とした「負担付遺贈」の遺言書を作成する。

(ポイント)

以前、ペット相続でも書きましたが「負担付遺贈」とは、「財産を渡すから〇〇をして下さい」と遺言に残すことです。
遺贈は遺言によって行います。

・具体例

財産が12,000万円あったとします。預金600万円でその他の財産600万円。

負担付遺贈で介護する条件で長男に預金600万円を渡すと遺言したとします。

通常の法定相続はこうなります。

妻  12,000万円×1/2=600万円

長男 12,000万円×1/4=300万円

長女 12,000万円×1/4=300万円

ですが遺贈で長男に預金600万円を渡しているので計算はこうなります。

長男 12,000万円×1/4-600万円=-300万円

※マイナスになった場合は、0円という扱いになります。相続分はないということです。

「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受け取ることができない。」 民法第903条2項

ですので残りの600万円を他の相続人が法定相続に従って相談します。

念のため、生前に長男に頭出ししておいた方がいいです。遺贈は放棄もできるので。

⑤「介護をしてくれる子の嫁に譲りたい。」

・遺言者(ご主人)

・息子

・息子の嫁

・他の子供たち

(相談内容)

「妻は早くに他界し、息子と息子の嫁と3人で暮らしています。息子の嫁はずっと介護をしてくれ献身的です。ろくに顔を見せない他の子供たちでなく、息子の嫁に嫁に財産を残したいです。」

(解決方法)

1 息子の嫁の寄与分を明示し遺言で遺贈する

2 息子の相続分を多くする

(ポイント)

1について

まず、息子の嫁には相続権はありません。

しかし、実際に共同生活をすることで年老いた義理の父の生活を支援し介護してくれる姿は、法律上の家族よりも深い絆や思いが生まれる事は自然です。

その恩義に報いる方法として「寄与分」があります。

「寄与分」とは相続人の1人が介護や身の回りの生活をしたり、事業の労務を補助したり等したことで他の相続人よりも財産を多く取得させることができるものです。民法 第904条の2

この場合、息子の嫁は相続人ではありません。

今までの寄与分は相続人を念頭に置いているものですが、実際の介護などは相続人にならない親族が行うことも多く不公平な側面もありました。

実際の裁判でも色んな判例があり、相続人の配偶者にも寄与分を考慮しようという試みもありましたが、否定的な見解もありました。

ですが、民法が改正されました。

実は以前から個人的に条文化されることを願っていたので明文化された時は嬉しかったです。

「被相続人に対して無償で療養介護その他の労務の提出をしたことにより被相続人の財産の維持又増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができる。」 民法 第1050条

つまり、息子の嫁には権利があることになります。

遺言書でその旨を書くことで確実になります。
ですが「遺留分」には気を付けて下さい。

争いになったことも予想して「公正証書遺言」にすることをお勧めします。

2について

息子に多く財産を残すことで、間接的に息子の嫁の財産を増加させることもできます。
この場合も遺言書で、その理由を書き、後々子供同士で揉めないようにしないといけないですね。

⑥「再婚後の子と前妻の子とで相続争いをしてほしくない。」

・遺言者(ご主人)

・奥様

・子供

・前妻との子供

(相談内容)

「前妻と死別し、その後再婚して子供もできました。前妻との間にも子供がいますが、交流も現在はありません。私が亡くなったあとに前妻との子供と再婚後の子供が揉めずに遺産分割する方法はないですか。」

(解決方法)

遺言書で遺産の種類と金額を明示し、誰になにを相続させるか決めておく。
前妻との子供には法定相続分より多く相続させる。

(ポイント)

相続人が妻と子供などシンプルならいいですが、複雑な家族関係の場合は色々心配になると思います。

まずは財産を把握し財産目録を作りましょう。
その後、財産の分配を考えます。

考える時のポイントは、前妻の子供にどれくらい残すかです。

法定相続の場合はこのようになります。

・奥様     1/2

・子供(再婚後)1/4

・子供(前妻) 1/4

ただ、将来奥様がお亡くなりになると、奥様の分の1/2は再婚後の子供が相続することになるので、結果的に再婚後の子供は3/4、前妻との子供は1/4になります。

このことに考慮して前妻との子供には法定相続分より多く相続させることを、遺言書に書いておくことで争いを防止できます。
金額は奥様と今の子供と話し合ってもいいかもです。

これも争いになったことも予想して「公正証書遺言」にすることをお勧めします。

(まとめ)

今回は3つのケースを書きました。

④残された妻の扶養や介護を子供にお願いしたい。

⑤介護をしてくれる子の嫁に譲りたい。

⑥再婚後の子と前妻の子とで相続争いをしてほしくない。

残りは次回書きますのでよろしくお願いいたします。

次回は「遺言書 ケース別③」についてブログを書きますのでよろしくお願いします。