「遺言書 ケース別①」について

こんにちは。
福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

このブログではどなたの身近にも起きうる可能性がある、相続、申請、トラブルなど日々の問題や心配事を解決するためのお役立ちアドバイスを更新していきます!
もっとこんなことを知りたい!や具体的な事案などあれば、コメント・メールお待ちしております。

今回は「遺言書 ケース別①」についてブログを書きます。

以前ブログで「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の概要を書きました。

その時に書いた内容は概要だったので、今回ケースごとに書くためのポイントを書いていきます。
まだ以前のブログを読んで方はリンクを貼ってますので、ご興味あれば覗いてみて下さい。

人生皆色々で、自分の残したいメッセージも十人十色です。

ただ、遺言書というのは自分のメッセージだけ一方的に残しても、後々残された家族間で揉め事やトラブルを生み出してしまうので、法律の趣旨に乗っ取って正確に作成する必要があります。

今回、具体的な事例は下記です。3回に分けて書きます。

架空の人物からの相談を受けたという設定にします。

①子のいない夫婦が妻だけに遺産を残したい。

②相続人でない人に財産を譲りたい。

③遺産は家だけだが妻に譲りたい。

④残された妻の扶養や介護を子供にお願いしたい。

⑤介護をしてくれる子の嫁に譲りたい。

⑥再婚後の子と前妻の子とで相続争いをしてほしくない。

⑦甥と姪にも財産を残したい。

⑧障害のある子供に多く財産を残したい。

⑨内縁の妻子に財産を渡したい。

①「子のいない夫婦が妻だけに遺産を残したい。」

(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・奥様

・兄弟姉妹

※子供はいなくて両親は他界しています。

(相談内容)

「子供がいないので夫婦2人で長年過ごしてきました。兄弟姉妹はいますが遠方に住んでいて、ほとんど付き合いがない状態です。
将来遺産分割になると、遠方なので妻に労力と手間をかけさせてしまうし、妻の老後の資金に財産を全部残したいです。」

(解決方法)

妻に全ての財産を残す旨を遺言する。

(ポイント)

子供がいない場合の相続はこのようになります。

・相続人が配偶者のみなら、配偶者が全財産を相続します。

・相続人が配偶者と親なら、配偶者が2/3で親が1/3になります。

・相続人が配偶者と兄弟姉妹なら、配偶者が3/4で兄弟姉妹が1/4となります。

・子供が死亡していて孫がいるなら、配偶者が1/2で孫が1/2となります。
相続人が死亡していて、その子供がいた場合代わりに相続します。「代襲相続」といいます。

相続には「遺留分」というものがあります。
相続人が最低限の財産を受け取れる権利です。

遺留分を侵害された場合、その請求をする権利があります。

ですが、兄弟姉妹は遺留分がありませんので、遺言書に妻に全財産を残す内容を作成すれば兄弟姉妹は請求をすることができません。

もし財産が2,000万円だった場合、法定相続ですと兄弟姉妹に500万円いってしまいますが、遺言することで、その分も妻に残せます。

②「相続人でない人に財産を譲りたい。」

(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・奥様

・子供

・お世話になった第三者

(相談内容)

「私がなくなると相続人は妻と子供の2人だけですが、私には大変お世話になった方がいて、その方にも是非財産の一部を譲りたいのですが。」

(解決方法)

遺留分に注意し、お世話になった方に金銭などを譲る遺言をする。

(ポイント)

自分の財産を相続人以外の人に譲渡することはでき「遺贈」といいます。
「遺贈」は遺言によって行います。
遺贈は2つあります。

・包括遺贈 「遺産の半分」など割合だけ指定するもの

・特定遺贈 「〇〇銀行の預金」など財産を指定するもの

遺贈する場合の注意点ですが、①でも書いた「遺留分」が絡んできます。

遺留分は本来受け取れる財産の半分を請求することができる権利ですので、そこを計算して遺言書で遺贈の財産を指定する必要があります。

※ちなみに遺贈は権利を放棄することもできます。
「包括遺贈」の場合は遺贈されたことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てします。
「特定遺贈」の場合は申し立ては不要です。

③「遺産は家だけだが妻に譲りたい。」


(登場人物)

・遺言者(ご主人)

・奥様

・子供

(相談内容)


「自分の財産は自宅しかなく長年2人で暮らしてきた思い出もあるから、今後も妻に住んでもらうために譲りたいが子供と遺産分割をすると家を売るしかないのでしょうか。」

(解決方法)

1 妻が自宅を相続し、他の相続人への代償措置を遺言する

2 配偶者居住権を利用する

(ポイント)

1について

財産が自宅だけですと、それを奥様がすべて相続すると子供の遺留分を侵害してしまいます。
子供が権利を放棄してくれればいいですが、必ずそうなるとは限りません。

ですので子供に対しての代償措置として、生きている間に金銭などを生前贈与して遺留分を主張しないように説得したり、相続時に子供に金銭を相続させるために少しずつ準備する等です。

2について

民法改正により「配偶者居住権」の制度が施行されました。 民法第1028条

「配偶者居住権」は配偶者が自宅の権利を相続しなかったとしても、原則生存中は自宅に居住できる権利です。

権利を取得できる方法は4つです。

・遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき

・配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

・配偶者に配偶者居住権を取得させる死因贈与契約があるとき

・家庭裁判による審判で認められたとき 

※登記が必要となります。

「配偶者居住権」の良いところ

「配偶者居住権の評価額」があります。
例えば、自宅2,000万円と預金2,000万円の財産があったとして、奥様が自宅2,000万円を相続し子供が預金自宅2,000万円を相続した場合、奥様は不動産は相続しますが、現金は受け取れないことになります。
その場合、老後の生活が心配ですよね。

「配偶者居住権の評価額」というのは、自宅2,000万円の中で配偶者居住権の評価額として、権利を持っている状態なので、自宅2,000万円をまるまる相続せずとも自宅に住むことができます。
つまり預金2,000万円のうち幾分かの現金を相続できます。

※不動産の所有権とは違います。

子供が優しくて母に譲るということなら遺言し生前贈与する選択肢もありますし、なんとも言えない場合は配偶者居住権がいいです。
配偶者居住権は現代よくある問題を解決するために最近できた制度ですので。

(まとめ)

今回は3つのケースを書きました。
①子のいない夫婦が妻だけに遺産を残したい。
②相続人でない人に財産を譲りたい。
③遺産は家だけだが妻に譲りたい。

残りは次回から書きますのでよろしくお願いいたします。

次回は「遺言書 ケース別②」についてブログを書きますのでよろしくお願いします。