「LGBT ⑨」について

こんにちは。

福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

ここまでLGBTの方々が家族に近い状態で生活が出来る対策を書いてきました。

今回が最終回です。

また別の機会に契約書類の具体的な書き方はブログでアップしようと思ってます。

では、前回までのおさらいは下記です。

①準婚姻契約

②任意後見契約

③死後事務委任契約

④養子縁組

⑤公正証書遺言

この5つの構成ですが、①~③がパートナーと家族に近い状態で生活が出来る様に、法的効力がある契約書を作成すると内容です。

④と⑤はパートナーに財産を残すための方法です。

前回までで④まで書いたので、今回は最後に⑤の「公正証書遺言」について書きますので、宜しくお願い致します。

(公正証書遺言について)

LIFE行政書士事務所は相続に特に力を入れているので、過去何回か「公正証書遺言」のブログを書きました。

概要はこちら、具体例はこちらです。

○公正証書遺言の概要

「公正証書遺言」は公証人が遺言者からの遺言の内容の口述を受け作成します。

公証役場で作成し保管されます。

公正証書遺言は相続が開始される際に、通常は検認という家庭裁判所が内容を確認する作業を省略することができます。

万が一遺言書をめぐって裁判で争われた時も、信用力が一般の遺言書よりも強いので確実に遺言を実現されたい方にはお勧めのものです。

特にLGBTの方々の場合、残念ながら周囲の親族から受け入れてもらえないこともあると思うので、通常の遺言でパートナーに財産の一部を残す遺言書よりも、公証役場で作成された正式な書面の方が強力です。

(公正証書遺言のメリット)

LGBTの方々が公正証書遺言を作成するメリットは下記です。

①パートナーに財産の一部を残す内容を記載できる。

②生命保険の受取人にすることもできる。

①について

民法では、配偶者は常に相続人となります。 民法890条

配偶者と一緒に相続人になるのは下記です。

・配偶者+子・孫・ひ孫 ※代襲相続があった場合を含めて。

・配偶者+直系尊属(両親、祖父母)

・配偶者+兄弟姉妹

つまりくまなく、親族が相続ができ、法律上の家族でないパートナーには相続する権利はありません。
※前回書いた養子縁組は当然に相続人です。

ですので、遺言書でパートナーに財産の一部を残す旨を記載します。

この時に上でも書きましたが、通常の自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にすることで、遺言書は安全に管理され、裁判の時の大きな証拠となります。

財産が大きいと、親族の中の誰かが「赤の他人に渡すか!」とか「お前なんて認めない!」とか、いいかねません。

そして、そんな人は訴訟を起こしてきたりする可能性も十分にあります。

ここで一番大事なポイントが「一部を残す」です。

この世で一番愛しているかけがえのないパートナーに全ての財産を残したい気持ちは分かりますが、相続人には「遺留分」というものがあります。

「遺留分」とは、相続人が最低限の相続分を受けれる権利です。 民法第1042条

配偶者がいない前提で書きますと、最低限とは、直系尊属が相続できる財産の1/3、もし子がいた場合は1/2です。

例えば財産が3,000万円あったとすると子はそのうちの1,500万円で直系尊属の親は1,000万円が請求できる金額です。

※兄弟姉妹は遺留分はありません。

この遺留分を侵害されると「遺留分侵害請求権」を行使できます。 民法第1046条

この請求権の消滅時効は、侵害があったことを知った時から1年、相続開始から10年ですが、請求権を行使しようと考える方は、ほぼほぼ知った時から1年以内に請求してくると、考えた方が自然です。 民法第1048条

ですので、遺留分のことを考慮した上で遺言書を作成します。

本当に全財産をパートナーにあげたい場合は、養子縁組をした方がいいです。

②について

「パートナーシップ宣誓制度」のブログでも書きましたが、現在はパートナーシップ宣誓制度に応じた民間サービスの提供が始まっており、生命保険もその中の代表的な例です。

公正証書遺言の中に、保険の受取人をパートナーにすると盛り込むことで、より現実的になります。

生命保険会社によりますが、契約において受取人を配偶者や親族に限定していない会社もあるので、約款を担当に確認し契約するといいと思います。

(作成の流れ)

①財産を特定する

②遺言する内容を決めておく

③証人を誰かにお願いする

④必要書類を準備する

⑤公証役場で作成する

①について

不動産であれば登記簿謄本、固定資産税評価証明書です。
預金であれば銀行通帳等が必要です。
株券があるかや、車等の動産、思いつく限り自分の財産を調べあげます。

②について

先程も書いたように「遺留分」があるので、将来、大切なパートナーが遺産争いに巻き込まれないように、慎重に相続の配分を考えます。

遺言書なので、1人で考えてもいいと思いますが、パートナーにも考えや思いがあると思うので、可能なら2人で話し合って決めた方がいいと思います。

③について

証人を2人決めて証人になってもらうことをお願いすることになります。
難しければ公証役場に相談すると斡旋してくれるとこともあるみたいです。

ですが、2人の事をよく理解してくれている友人や知人がいいのではないでしょうか。

※証人は、未成年者や推定相続人はなることができません。

④について

必要な書類は下記です。

・遺言者の実印と印鑑証明書

・遺言者と全相続人との関係がわかる戸籍謄本

・パートナーの住民票

・財産がわかる書類

・証人の身分証明書(免許証やマイナンバーカード)、証人は実印でなく認印でも大丈夫です。

⑤について

公証役場に公証人2人と行きます。

公証人の前で原案をを述べ、必要書類を渡します。 

公証人が内容を確認し、遺言者と証人が署名押印します。
必要に応じアドバイスもくれます。

公正証書遺言の正本と謄本を受け取り、料金を支払います。※費用は財産価額で変動します。

(まとめ)

今回まで「LGBT」の方々が、安心して生活するための法律的観点からブログを書きました。

方法は沢山あり、どれか1つでなく組み合わせておくことで、2人の関係を法律のバリアが守ってくれます。

最近は、「LGBT」は社会的に認知度が高くなり、昔よりずいぶん理解されてきています。

福岡県も県自身でパートナーシップ宣誓制度の導入を検討しており、今後の展開が楽しみです。

ですが、まだ不完全です。理想の社会にはまだ程遠いのが現状です。

実際、自殺をされてしまった方々の人口の割合でいうと、LGBTの方々が20%から30%と言われています。

自殺率が非常に高いのです。

何も悪いことをしてもいないのに、辛い話です。

それは、差別であったり、極端になるとイジメであったり、結局なんらかの形で、暴力を受け、傷つけられたからです。

人を傷つける人は、なぜ相手の痛みをイメージできないのでしょうか。

行政書士の私がこんなこと書くのもどうかと思いますが、切にそう思います。

社会は1人1人の人の集まりで構成されています。

1人1人には個性という色があります。

その色が鮮明であればあるほど、社会はカラフルになり、それってとても楽しい事だと思います。

多様性を認めるという言葉はちょっと堅苦しいので、カジュアルに表現すると、それぞれの色を認め合い、社会という大きなキャンバスに皆で色をそれぞれ付けていくということです。

魅力的です。そんな社会、そんな街で私は暮らしたいです。

そのため、社会を構成している1人1人の考え方や思いやり、そんなのが大事なことだと思います。

実際、そんな思いやりとか優しさが溢れる街で、皆様も暮らしてみたいと思いませんか。

今回は、たぶんこの運営しているブログで最も長いテーマになりましたが、1人でも多くの方の目に触れて、色んな方に色んなことを考えて貰えたら嬉しいです。

皆さま、お忙しい中、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

次回は法人のお客様向けで「ドローン ①」についてブログを書きますのでよろしくお願いいたします。