こんにちは。
福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。
突然、寒くなりましたね。
もう半袖の方を街で見かけることはなくなりました。
まあ、もうすぐ11月なので。
体調管理と引き続きの手洗いうがいで、健康に過ごしましょう。
では、前回のブログの続きを書きます。
ペットを守るために法律上で出来ること、トラブルの解決、その他ペットに関する法令、いわゆる「ペット法務」が今回のテーマです。
内容は下記です。
①ペットに関する契約書
②ペットに関する内容証明
③ペットに関する飼育許可
④ペットに関する事業者の登録申請
前回は「①ペットに関する契約書」の中の「ペットの譲渡契約書」について書きました。
今回は、その他の契約書を書きます。
ペットに関する契約書は代表的なものは下記です。
①譲渡契約書
②離婚協議書
③交配契約書
④ペット信託契約書
(ペットに関する離婚協議書について)
これは、ペットを守る目的というよりは、飼い主の都合により発生するペット法務の内容になります。
今まで家族同様に暮らしていたペットですので、離婚になった場合、今後のペットの所有権で揉めるケースは割とあります。
子供と同じ様に可愛くてしょうがないので、お互い一歩も譲らないケースです。
例えば、私の家庭のように、結婚前から妻がペットを飼っていた場合は、ペットの所有権は妻にあります。 民法 第762条
ですが、結婚後にペットを飼い始めると、夫婦の共有財産となります。
通常は物の場合は、時価を算出しその半額を金銭で渡したりするのが、一般的ですが、ペットの場合は「物」と考える事が難しいことも多々あります。
最終的には、夫婦どちらかに所有権がありますので、このケースの場合は下記の内容を、「離婚協議書」の中に盛り込む事が多いです。
①面会交流権
②飼育費用
③生活環境の条件
①面会交流権について
人の子と同じ様に、可愛がっていたペットに会いたいという気持ちを捨てることが出来ない場合は、「面会交流権」の設定をします。
一般的な離婚協議書の「子との面会交流」の設定と内容は大きく変わりません。
年に〇回、月に1回などを協議して決定します。
②飼育費用について
通常は所有者が負担をします。
ですが、複雑な事情がある家庭も存在します。
例えば、離婚前にペットの世話をずっと奥様がしていて、ペットが奥様になついていた場合、所有権が奥様になったとします。
ですが、離婚の原因が奥様にあり慰謝料の請求が出来ない場合、離婚して経済的に厳しい環境でペットを飼育する場合などは、所有権の無い旦那様が負担するケースも0ではないので、これも協議して決定します。
毎月何日に振込や、離婚時に一括で支払うなど、方法は様々です。
③生活環境の条件
所有者が適した飼育ができるか条件を付ける事もできます。
ペットの飼育ができる生活スタイルか、飼育できる経済状況かなどです。
そして、離婚協議書の作成で一番難しいのが、「所有権」はどちらになるかです。
子の親権と同じ様なものです。
判断するポイントは、上でも書きましたが、飼育できる経済力、生活スタイル、今までの飼育の貢献度など、総合的に判断することになります。
どうしてもペットを引き受けたい場合は、夫婦の共有財産の取り分を相手に多く渡す等、お互い譲歩が必要となります。
(ペットに関する交配契約書について)
「交配契約書」はワンちゃんを飼っている場合が一番多い契約書です。
自分の愛犬と他の家族の愛犬、もしくはブリーダーの交配犬と交配し、子犬を生むための契約です。
私も小学生の頃、近所のワンちゃんが子犬を生んでて、可愛くもあり、神秘的でもあり、ドキドキしたのを覚えてます。
「交配」もきちんと取り決めをすることで、トラブルを回避できます。
一般的な取り決めは下記です。
①交配前の体調
②費用
③実施方法
④出産後の取り決め
①交配前の体調について
まずは、交配前は「ワクチン接種」は必須です。
ワクチン接種をすることで、相手のワンちゃんにもリスクが少なく、生まれた子犬にも免疫が付くことがあります。
契約締結の際にお互いの診断書を確認した方がいいです。
出産に向けての食事の取り決めをすることも出来ます。
②費用について
一般的にはメスの犬に子供を宿すので、オスの犬の家庭に交配料金を払う事が多いです。
その場合は、金額と支払い方法、期限を契約書に記載します。
ブリーダーに依頼する場合は、目安として10,0000円弱くらいです。
逆の場合メスに生んで貰って、オスの家庭で育てる場合も同様です。
交配中の怪我に関する取り決めもした方がいいです。
その場合は、治療費と損害金の取決めになります。
ですので、そのリスクを避けるために、「自然交配」でなく「人工交配」を選ぶ方も多いです。
自然交配の場合は、なんか可哀想ですが、証拠を残すためビデオ撮影する方もいるみたいです。
③実施方法について
・交配 「自然交配」か「人工交配」か
・繁殖場所はどうするか、ビデオ撮影をするか
・交配の期間はどうするか
・期間中の食事の設定
※豊富なタンパク質と脂質が必要になります。
④出産後の取り決め
・メスの家庭とオスの家庭、どちらが子犬の所有者になるか決めておきます。
・着床しない場合や死産の場合の取り決め
・交配証明書の交付と血統書の登録をどちらでするか。
※血統証明書の登録は、入会金、年会費、犬舎登録、母犬名義変更、子犬の登録など全部込み込みで、20,000円いかないくらいです。
ワクチン接種もどちらか決める必要があります。
そしてこの「交配契約書」で、必ず記載した方がいい内容は、「メスの犬が交配によって死亡した場合」です。
出産は人もワンちゃんもリスクが必ずあります。
ここは、非常に重要なので、慎重に取り決めをお願いします。
(ペットに関するペット信託契約書について)
以前、ペット信託についてブログを書いたので重複しますが、前回は簡単な概要だけだったので、今回はちょっとだけ詳しく書きます。
まず「信託」の意味ですが、「信じて、あなたに託します」ということです。
これは、自分にもしものことがあった時の準備です。
例えば、高齢で施設に入らないといけなくなったり、身寄りがなく自分が死んでしまったら、ペットが路頭に迷うのを防ぐためです。
信託は生前、死後に関わらず実行される点が特徴です。
「信託法」に基づいた契約となります。
ペット信託の登場人物は下記です。
・委託者:ペットの飼い主
・受託者:信託財産を管理する者
※個人(家族や友人)、法人どちらでもいいです。NPO法人がやってたりもします。
・受益者:実際にペットを飼育する人
※飼育費は信託財産の中から払われます。
ペット信託契約書を作成すると、受託者と受益者を監督する「信託監督人」を置くことも出来るので安心です。
注意点としては、死後に発生する信託契約の場合、あまりにも極端な財産を信託財産にすると「遺留分」の問題が出てきます。
遺留分とは、相続人が本来受け取れる相続財産の半分を請求できる権利です。
信託と遺留分の関係性を明らかにした最近の判例を載せます。
「遺留分制度を逸脱する意図で信託制度を利用するものであって、公序良俗に反して無効である。」
平成30年9月12日 東京地方裁判所
「公序良俗に反して無効」がポイントなので、契約書作成の時は専門家に相談しながら、慎重に作成した方がいいです。
公正証書での作成がお勧めです。
(まとめ)
今回はペットにまつわる他の契約書について書きました。
法律上は「物」でも、物で割り切れないので自分の意思や希望を実現するために、契約書を作成します。
公正証書にすることで、その契約書の効力は強いものになります。
知っておくだけで損はありません。
ペットは「物権」と書きましたが、契約書を作成する場合はその他の色んな法律の要素が絡んでくるので、慎重に正確に作成することが一番大切なことです。
次回は、私の妻と犬に起きた事件絡みで「内容証明」を書きます。
次回は「ペット 内容証明」について書いていきますので宜しくお願い致します。