こんにちは。
福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。
最近、朝晩涼しいどころか半袖ですとちょっと肌寒くなってきましたね。
でも、日中はやはり暑いので半袖か長袖かの判断が難しいです。七分袖という方法もありますが、ビジネスシャツは七分袖がないんですよ。
毎朝そんなことばかり考えてます。
気温の変化が激しいので、体調管理に気を付けて下さい。
ブログの話に戻りますが、今回も前回の続きで「戸籍 ⑤」についてブログを書きます。
以前のブログで書きましたが、旧法戸籍は現在に至るまで明治19年、明治31年、大正4年、昭和23年、平成6年に改正されてきました。
昭和22年以降の戸籍は「現行戸籍」といいます。
平成6年以降が「コンピューター化された戸籍」です。
明治、大正の戸籍は「旧法戸籍」といいます。
(旧法戸籍の特徴)
旧法戸籍は、一家の代表者であり権限者である「戸主」を中心とした「家制度」に基づいて戸籍が編製されていました。
新しい戸籍を編製する原因の一つに「家督相続」があります。
「家督相続」とは、戸主の死亡や隠居によって戸主の地位と家の財産は家督を相続する者が承継します。(基本的に長男です)
家督相続によって、もとの戸主の戸籍は除籍され、新戸主の戸籍が編製されます。
現在の戸籍との違いとしては、現行の戸籍は筆頭者の死亡によって戸籍は当然に除籍されませんが、旧法戸籍は除籍される点が大きな違いです。(現在の戸籍は筆頭者が死亡すると×印が付いたり除籍の文言が記載されますが、まだ筆頭者は変わりません)
(旧法戸籍の用語)
旧法戸籍では、戸主を中心に、戸主の親、妻、子、孫、兄弟、兄弟の家族など、「家」に所属する複数の家族が1つの戸籍の中に記載されていました。
1つの箱の中に色んなお菓子の詰め合わせみたいな感じです。
①戸主
一家の代表者。戸籍の最初に記載されます。
当時は家族の婚姻などは戸主の同意が必要だったので、同意を得ずに勝手に結婚したりすると戸籍からその人を除くことが出来るなどの強い権限を持ってました。
②女戸主
戸主は基本的に男性が多いですが、たまに女性が戸主になることもありました。
③隠居
戸主が生前に長男などに財産を承継して隠居することです。
④家督相続
戸主を長男などに引き継ぐことです。死亡や隠居した時に行われました。
家督相続が行われることで戸主が変わり、新戸籍が編製されます。
⑤庶子
父から認知された非嫡出子です。
⑥婦
戸主以外の子供たちの妻。
⑦入夫婚姻
女戸主である妻の戸籍に夫が入ることです。婚姻後、戸主の地位は夫と妻でチェンジすることも出来ます。
⑧婿養子縁組
夫は妻側の戸籍に入り、婚姻と妻の親と養子縁組を同時にすることです。
これは⑦の入夫婚姻とは違うものです。
⑨家附の継子(いえつきのけいし)
婚姻や養子縁組によって戸主が入籍する前にその家で出生していた配偶者の子のことです。
実子や養子でなくても相続権があります。
⑩廃家
戸主が家族を連れて他の家に入籍するため、元の家を廃することです。
⑪分家
戸籍に属する家族の一人が戸主の同意を得て、その家を離れて新戸籍を作ることです。
妻や直系卑属(子など)も一緒に移動できます。
出て行った元の家を「本家」と呼びます。
(旧法戸籍の内容)
比較として、明治31年と大正4年の戸籍の2種類の例を載せます。
大正4年生まれの方は2021年9月9日時点で誕生日が来ていれば106歳ということになるので、明治31年の旧法戸籍は今後見る機会は少ないと思いますが、理解が深まるので書いていきます。
〇明治31年式戸籍の特徴
明治31年に民法が制定され、新たな戸籍法が施行されました。
その時の戸籍の目的は「家に属する者の身分登録」と「家」を表すことです。
当時は出生、死亡、婚姻、離婚などの届出をすると身分登記簿に登録されました。
その中の重要な部分だけ簡略化されて戸籍に転記されました。
明治31年式戸籍の特徴としては「戸主トナリタル原因及ビ年月日」の欄があることです。
ここを見る事で戸籍がいつ作られたか確認できます。
※当時の戸籍簿は手書きで文字も小さく、あまり字も上手ではないので読みづらいです。
句読点もないですし、カタカナが多いです。
①について
現在の本籍地が記載されます。
②について
前の戸主の名前が記載されます。
③について
太文字にしてますが、時系列を意識して下さい。
妻と婚姻したのは、「大正拾年」ですので、この戸籍には妻は記載されていません。
明治のタイミングでの戸籍なので。
④について
前戸主との続柄や現在の戸主の情報が記載されます。
「戸主トナリタル原因及ビ年月日」で、この戸主がいつ戸主になったか記載されているのが特徴です。
⑤について
各家族の情報が記載されます。上の段には出生や死亡、婚姻などの事項が記載されます。
当時はおばあちゃんや甥など、「家に属する者」の情報が記載されます。
〇大正4年式戸籍
大正3年に戸籍法が改正されて編製されたものです。
昭和22年の改製原戸籍は大正4年式戸籍が基礎となっています。
特徴としては、明治31年式戸籍の特徴である「戸主トナリタル原因及ヒ年月日」の欄が廃止され、戸主の事項欄に記載されるようになりました。
身分登記簿も廃止され、身分事項に詳細が記載されるようになりました。
背景としては、身分登記簿の利用が少なく、保管場所も不足していたので廃止されています。
大正4年式戸籍の注意点は、戸主の事項欄に「戸籍事項」と「身分事項」が混載してあるので読みにくいことです。
時系列を意識しながら読む必要があります。
※当時の戸籍簿は手書きで文字も小さく、あまり字も上手ではないので読みづらいです。
句読点もないですが、この頃からカタカナの分が減り始めているなと個人的には感じています。
①について
現在の本籍地が記載されます。
②について
前の戸主の名前が記載されます。
③について
戸主の事項欄に「戸籍事項」と「身分事項」が混載しています。
ものすごく読みにくいと思います。
これも時系列を意識して読み解く必要があります。
今まで、「戸主トナリタル原因及ヒ年月日」の欄に記載されていた内容が上段の事項欄に記載されます。戸籍の変動や出生、婚姻などの身分事項も記載されます。
この場合、明治33年に出生し、昭和23年に転籍しているので、出生時点の本籍は「福岡県○○郡○○村弐番地」ではなく、「福岡県○○郡○○村弐百番地」になります。
④について
「戸主トナリタル原因及ヒ年月日」の記載が無くなりました。
⑤について
各家族の情報が記載されます。上の段には出生や死亡、婚姻などの事項が記載されます。
※ここまでが「戸主」が存在した時代でした。
これから先は「筆頭者」に変わっていきます。
(まとめ)
昭和23年に戸籍法が改正されました。
今までの「家」単位だったものを「一の夫婦とこれと氏を同じくする未婚の子」に移行させるものです。
当時は敗戦直後の混乱期でスムーズには行きませんでした。
10年ほど経過すると、三代戸籍禁止の新しい法律の基準で戸籍の改製作業が始まりました。
この時点で夫婦と子しかいない場合は、その戸籍に「昭和32年法務省令第27号により改製」などと記載して新戸籍としてみなしました。
そうでない場合は叔父や叔母などを除籍して新基準の戸籍を作成しました。
ここまでした理由としては、昭和22年に新憲法が施行されましたが、旧民法の家族制度は新憲法と相容れない状態だったからと言われています。
具体的には、旧民法では、家を統括する戸主の権限があまりに強く日本国憲法24条の「婚姻は両性の合意のみで成立する」や「夫婦が同等の権利を有する」、「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚する」などに相容れません。
その結果、戸主や家督相続の概念は排除されました。
そして、時が流れ平成に新たな内容で改製されることになるのです。
ちょっと今回は2つの時代を書いたので長くなりました。
次回はその他の戸籍に関わるものを書いていきますのでよろしくお願いします。
次回は「戸籍 ⑥」についてブログを書きますのでよろしくお願いいたします。