「ペット 内容証明」について

こんにちは。

福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

今書いているブログのテーマは「ペット法務」です。

ペットを守るために法律上で出来ること、トラブルの解決、その他ペットに関する法令などです。

内容は下記は下記となります。

①ペットに関する契約書

②ペットに関する内容証明

③ペットに関する飼育許可

④ペットに関する事業者の登録申請

前回までで、①ペットに関する契約書は書いたので、今回は②ペットに関する内容証明について書いていきます。

今回の主人公は私の愛犬「モモちゃん」です。
実際に起きた事件です。

イメージが湧くように今回も写真を載せます。

左側の犬です。

内容的にペットサロンの悪口みたいな表現になると思いますが、今存在するペットサロンのほとんどは善良なお店です。
ごくごく一部に良くないお店があるだけの話ですので、もしサロンの方がこのブログを読まれていた場合はご了承下さい。
今後ともお世話になりますので。

「ペット 譲渡契約書」の回で書きましたが、私の妻は以前、サロンにトリミングするため、モモちゃんという犬を預けた時、モモちゃんに怪我をさせられてしまいました。

当時、私は出会ってなかったのですが、サロンに迎えにいった時に足を引きずっていたとのことです。
可哀想です。

すぐに病院に連れて行くと、脱臼をしていて治療費が38,000円程かかりました。

サロンに事実確認と治療費の負担をお願いするも、知らないの一点張りで、事実確認で何度か電話をしていると、顧問弁護士から営業妨害だ!と抗議の連絡があり、怖くなって諦めたとのことです。
私が初めてその話を聞いた時は既に時効でした。

皆さまが同じ立場だったら、どうしますか?

私なら「内容証明」を作成します。

ですが、内容証明を作成する場合、きちんと法律的な根拠が必要です。
何も根拠がなければ、脅迫と変わりません。
逆にこちらが大変な立場に追い込まれることも0ではありません。

今回は、そこを書いていきますので、宜しくお願い致します。

(ペットに関する内容証明について)

過去に内容証明に関するブログは多々書きましたが、「内容証明郵便」とは郵便物の文書の内容、差出人および名あて人を証明する特殊取り扱いの郵便です。

トラブルが発生した時に、自分の主張や争いの内容を明確にし、相手に意思を伝える「公的な証拠」として残す通達手段です。

同時に配達証明をすることで、その通知を相手が受け取ったという証拠や、受取りを拒否したという証拠を残すことが出来ます。

通常は、貸したお金の返済や、契約の解除などが多いですが、「ペットの怪我」についての治療費等の請求にも使えます。

ペットに関する内容証明は種類が色々ありますが、今回は実話である「モモちゃんの怪我」の時、どういう内容証明を作成すべきだったかを書きます。

○事件の法的分析

この件を法的に分析していきます。

①ペットサロンの法的定義

②ペットが怪我した場合の法の適用

③損害賠償請求、慰謝料請求

①ペットサロンの法的定義について

ペットサロンがペットを預かって、トリミングをする仕事は「請負」になります。

民法 第632条

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力が生ずる。」

この場合はペットの飼い主が「注文者」、トリミングをするサロンが「請負人」となります。

②ペットが怪我した場合の法の適用について

トリミング中の怪我の場合は注文者は、損害賠償請求をすることが可能です。

請求できる理由はこうなります。

改正前の民法第634条には、損害賠償請求のことが明文化されてましたが、改正民法で債務不履行の一般規則、民法第564条にまとめられてます。(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

ですので、民法第564条の条文を基に請求をします。

よく聞くのが「器物損壊罪」で警察に行く!と考える方も多いと思いますが、故意にペットを怪我させた可能性は考えにくいので、器物損壊罪の犯罪は成立しないと考えた方がいいです。

民事の損害賠償請求の観点からみて、請負人であるペットサロンに対して、民法第644条にある「善管注意義務」を指摘するべきです。

善管注意義務とは、「善良な管理者の注意義務」のことです。

③損害賠償請求、慰謝料請求について

「特定物」今回のケースでは「モモちゃん」ですが、管理者「トリミングをする人」が注意をしていなかった場合、損害賠償請求の請求が可能です。

ここで、もう1つのポイントは「因果関係があるかどうか」です。

モモちゃんの怪我がトリミングする事に関わっているかです。
ざっくり言うとトリミング中に何かあって怪我をしたという事の証明です。

モモちゃんは喋ることが出来ないので、トリミング中、または待機中に下に落下したなどを証言することが出来ません。
カメラが設置されているサロンも多くはないでしょう。

善良なサロンは大きなガラス窓で外からトリミングしている光景を、外の歩行者が見れるようにしていたりします。
ですが、そうでない場合も多いです。

そして、ペットが怪我をした後に抗議すると、きっとこう言われることがあると思います。

「証拠ってあるんですか?」

実際、私の妻も言われました。

まるで、推理小説で名探偵に「犯人はお前だ!」と指摘された時の真犯人みたいな反応です。
皆様の大切なペットを預かっている仕事をする人の台詞とは、とても思えません。

「証拠」となりますと、サロンに連れていく前に怪我をしてない動画などを撮影してから、トリミングに行くのは現実的でありません。

ですが、考えてみて下さい。

愛犬が怪我をして足を引きずっている状態で、「トリミングして可愛くなろうね」と言いながら、いそいそとサロンにいく事は、まず考えにくいです。

つまり、サロンに行く前は元気だったと考えるのが自然です。

○同意書について

「当店は責任を取りません。」など記載してある同意書に署名してしまったから、請求できないんじゃないかと心配される方もいらっしゃると思いますが、安心してください。

消費者契約法 第8条によって、事業者の責任を免除する条項は無効になります。
同意書があっても損害賠償請求は可能です。

○損害賠償と慰謝料について

基本的には、損害賠償は治療費や交通費が一般的です。
ですが、軽い怪我で自然治癒で治る程度だった場合は、請求が難しいこともあります。

損害賠償請求をする場合は、交通事故みたいに過失割合で計算されますが、サロンに預けていて、飼い主はその場にいなかったので、基本的に治療費の満額を請求することがほとんどです。

慰謝料に関してですが、怪我の場合は慰謝料はないと考えた方がいいです。

過去の判例では、ペットが死亡した場合は慰謝料が認められたケースは存在します。
飼い主の精神的苦痛を考慮してです。

怪我でも十分に飼い主の精神的苦痛が認められてもよさそうですが、どうしても「物」扱いになってしまいます。

ですが、善良なショップは治療費満額+αで少しの慰謝料を乗せて、多く出してくれるところもあるみたいです。

(まとめ)

今回は私の愛犬「モモちゃん」に起こった事をもとに、こうした方が良かったんじゃないかという内容で書きました。
モモちゃんも自分の事をブログに書かれることに対して、特に異論はなさそうでしたので。

私の知っているサロンは腕も良く、料金も良心的で、大きなガラス窓で外から見えるようにトリミングをしてくれます。
スタッフの方も親切で、本当にいいサロンです。

ですが、物事には100%は存在しなく、愛するペットを傷つけられる可能性もあります。

その時に、まずは内容証明です。

私の妻は、警察に行き、消費者センターに相談し、法テラスにも行ったのですが、結局解決は出来ませんでした。

内容証明もそうです。
必ず成功する訳ではありません。

相手が受取を拒否する可能性も0ではありません。
その時は別の方法を考えるしかありませんが、まずは内容証明を送るのがいいと思います。

泣き寝入りが一番辛く、ずっと心の傷として残ってしまいますので。

何かあればご相談下さい。

次回は「ペット 飼育許可」について書いていきますので宜しくお願い致します。