「離婚協議書」について

こんにちは。

福岡県久留米市にあるLIFE行政書士事務所の中江です。

前回から「離婚」に関連するテーマでブログを書いています。

流れとしては下記です。

①婚姻費用合意書

②離婚協議書

③離婚に関するQ&A

前回は「婚姻費用合意書」を書きましたので、今回からは離婚協議書について書きます。

離婚協議書の内容の前に、婚姻費用合意書を書いたのは理由があります。

離婚協議をスムーズに進めるためです。

協議離婚は、夫婦の話し合いによる合意のもと成立します。

離婚を検討するに至った場合、円満な話し合いは困難な場合が多いです。

その場合は、一度距離を置く方が多いです。

なぜなら、一刻も早くこの人から離れたいと感情が高まると離婚を急ぎ、慰謝料や養育費の取り決めもきちんとしないまま、離婚届を出してしまうケースもあるからです。

離婚協議書を作成する前に距離を置き、冷静に今後のことを決めていく必要があります。

その時に必要なのが、婚姻費用合意書になるわけです。

では、これを基に離婚協議書の内容を書いていきます。

(離婚協議書について)

以前も離婚協議書のブログを書いたので、少し重複する部分がありますが、ご了承ください。

裁判離婚でなく、協議による離婚は、双方の合意により成立します。
ですので、一方的な意思表示ではいけません。

協議離婚をする場合は、今後の養育費の支払い、親権者、面接交渉権の内容等を細かく、書面で作成します。
これが離婚協議書です。

基本的には、公正証書にする方がほとんどです。
理由としては、「強制執行認諾約款付公正証書」を作成することです。

「強制執行認諾約款付公正証書」を作成すると、養育費等の支払いが滞ると、裁判を経る事なく強制執行手続きをすることが出来ます。

作成する場所は、公証役場となり、そこにいる公証人が原案を基に作成します。
公証人が作成する公的文書なので、事実を証明する上で非常に有力な証拠にもなります。

※話がちょっと脱線しますが、公正証書は様々な契約書作成に利用されます。
遺言書、金銭消費貸借契約書、不動産売買契約書、任意後見契約書、負担付贈与契約書などです。もっと沢山あります。

(離婚協議書の内容)

離婚協議書の必須内容は下記です。

①養育費

②親権・監護権

③面接交渉権

④財産分与

⑤慰謝料

⑥履行されない場合の取り決め

①養育費について

「養育費」は子の権利になります。
年齢により養育費は増額するのでしっかり計算し、再婚した場合はどうするか等もきちんと取り決める必要があります。
成人するまでの支払いか、大学卒業までの支払いかも取り決めが出来ます。

目安は裁判所がHPで公表してますので、ご参考にされて下さい。

子供が病気やケガをした時は増額する、支払者が経済的に困難な状態になった時は減額する等の取り決めも、話合いで盛り込むことが出来ます。

②親権・監護権について

「親権」は法定代理や財産管理の意味です。
未成年者が行う契約は親権者の同意が必要で、同意がないものは親権者が取り消すことができます。
例えば、携帯電話の契約やスポーツクラブの入会等です。

親権は「親の権利」と思っている方も多いと思いますが、保護を必要とする子どものためにあるものです。
ですので、子供を養育する義務を指す事が多いので、一般的には同居していることが多いです。

ですので、監護権と親権は特別な事情がない限りは、分けない方がいいという考え方が多数です。

分けてしまうと、子供の携帯電話などの契約をする際に、その都度前の配偶者にあって同意を求めないといけなくなります。

③面接交渉権について

「面接交渉権」は子の権利です。
年に何回、月に何回会えるかを取り決めます。
運動会や入学式、その他の行事の参加の可否、宿泊をしていいかも含めて取り決めます。

ですが、「絶対に子供に会わせたくない!」と認めない場合は、面接交渉の調停の申し立てが必要になりますので、早めに弁護士の先生に相談した方がいいです。

子に不利益があると判断された場合は、面接交渉権が認められないケースもあります。

④財産分与について

「財産分与」は、「婚姻中に夫婦で取得した財産を離婚に際して清算し、お互いの寄与度に応じて分配すること」です。
民法第768条に明記されています。

そしてこれは、協議離婚だけでなく、裁判離婚にも準用されます。

基本的には半分ですが、半分で協議が成立しない場合は家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することになります。

その時の条文がこれです。

民法 第768条第3項

「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分配をさせるべきかどうか並びに分配の額及び方法を定める。」

注意する点は車や住宅のローンがある場合、マイナス財産も半分になることです。
また、夫か妻どちらかが親からもらった財産は、どちらかが勝手に作った借金等は特有財産になるので分与の対象にはなりません。

⑤慰謝料について

「慰謝料」は、離婚の原因を作った方が、苦痛を与えた相手に対して、支払う金銭的賠償です。
浮気、暴力、家庭放棄などの離婚の原因を作った事実です。

夫婦双方に離婚の原因がある場合や、性格の不一致などは慰謝料請求はできません。

慰謝料の金額は、請求する人の精神的・肉体的ダメージや、支払う側の有責性や経済力で金額が決まります。
ここは専門知識が必要なので、法律家に相談した方がいいです。

ポイントは下記です。

・有責性の程度

離婚の原因になった行為の内容、程度、背信性を考慮します。

・精神的苦痛の程度

離婚の原因で受けた精神的苦痛の程度は、ノイローゼになったり自殺を図ろうとしたり、その状況の程度です。

・請求者の生活力

収入が男性より低い女性の場合は、男性の請求者より金額が高くなることが多いみたいです。

・有責者の経済力

年齢・職業・資産・収入で考慮されます。

⑥履行されない場合の取り決めについて

「強制執行認諾約款付公正証書」を作成して、取り決めが守らない場合は、強制執行をします。

先程も書きましたが、「約束の支払いが滞った場合は、ただちに強制執行を受けても構いません」というような内容の一文を入れて、公証役場で作成します。

万が一、支払いがなかった場合は、給与や銀行の預金を差押えます。
現在は将来の養育費も、一回の手続きで未払い分を毎月差押えることも可能です。

通常は未払いがあると、養育費の支払いを求める調停・審判を申し立てすることになりますが、これを省くことが出来ます。

強制執行認諾約款付公正証書を作成し、未払いがあった時は下記の手順です。

1 強制執行認諾約款付公正証書の正本と執行分を公証役場に申し立てます。

2 必要書類を準備し、債権差押え命令申立書を作成します。

3 裁判所に債権差押え命令の申し立てをします。

4 債権差押え命令の送達

5 送達された日から1週間経過したら取り立てが可能です。

6 給与や預貯金を取り立てたら、完了届を提出します。

(まとめ)

今回は離婚協議書について書きました。

ポイントは冷静な状態でしっかり考え作成することです。
慰謝料や養育費も現実的な金額でなければ、実現が難しいですし、まず一番に「子のためにどの様な内容にするか」です。

自分のための書面よりは、どちらかと言うと子のためのウェイトが大きいです。

そしてもう1つのポイントとしては、強制執行認諾約款付公正証書は確かに安心出来るものですが、それだけに頼らず、可能であれば子との面接交渉権を認めてあげて、子に会わせてあげることが、一番支払い率は高いようです。

やはり自分の血が流れている子を無下にはできないのが親の心情ですので。

次回からは、よく質問があるケースをQ&A形式で書いていくので、宜しくお願い致します。

次回は「離婚 Q&A①」について書いていきますので宜しくお願い致します。